認知症
認知症とは
認知症は老化に伴う病気の一つで、様々な原因で脳細胞が死んだり働きが悪くなったりすることによって、記憶・判断力の障害などが起こり、社会生活や対人関係に支障が出てくる状態(約6ヶ月以上継続)を言います。
わが国では、高齢化の進展とともに認知症の患者数も急増しています。65歳以上の高齢者では、7人に1人くらいが何らかの認知症を患うものとみられています。
認知症の種類
認知症にはいくつもの種類がありますが、主なものとしては以下の4つが挙げられます。
このうち約60%はアルツハイマー型認知症が原因で、約20%は脳血管型認知症によるものと考えられています。
アルツハイマー型認知症
脳にアミロイドβ(ベータ)などの特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊れて減ってしまうために、神経が情報を伝えられなくなると考えられているタイプです。
また神経細胞が死んでしまうことによって脳自体も萎縮していき、体の機能も徐々に失われていきます。
認知症のなかでも一番多いタイプとされ、男性よりも女性に多く見受けられます。
脳血管型認知症
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳血管性の疾患によって、脳の血管が詰まったり出血したりして脳細胞に酸素が行き届かなくなり、神経細胞が死んでしまうことによって発症するタイプです。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では、レビー小体(神経細胞にできる特殊なたんぱく質)が脳の大脳皮質(人がものを考える場所)や、脳幹(生命活動を司る場所)にたくさん集まってしまいます。
レビー小体がたくさん集まっている場所では、情報をうまく伝えられなくなるため、認知症が起こります。
前頭側頭型認知症
頭の前部にある前頭葉と、横部にある側頭葉が萎縮することによって起こるタイプの認知症です。
若い人にも発症がみられます。
認知症の症状
認知症でよくみられる症状には、下記のようなものがあります。
- 何度も同じことを言ったり、聞いたりする。
- 物をしまった場所や置いた場所が思い出せない。
- よく水道を出しっ放しにする。
- 食事をしたことなど、直前のことが思い出せない。
- 現在の日付や曜日がわからない。
- 自分のいる場所がどこなのかわからない。
- 知人の顔がわからない。
- 季節感が無くなる。
- 人違いが多くなる。
認知症の治療
認知症を完全に治す治療法は、まだ存在しません。
そのためでしょうか、認知症はどうせ治らない病気なのだから医療機関にかかっても意味が無いと語る方がいますが、これは誤った考え方です。
認知症についても早期発見・早期治療はとても重要です。
認知症の治療法には、薬物療法と非薬物療法があります。
薬物療法
アルツハイマー型認知症の薬物療法には、認知機能を増強して、中核症状(記憶障害や見当識障害(自分が置かれている状況がわからなくなる)など、脳の神経細胞が壊れることによって直接起こってくる症状)を少しでも改善し、病気の進行を遅らせる治療と、行動・心理症状(不安、焦り、怒り、興奮、妄想など)を抑える治療があります。
薬の効果と副作用を定期的にチェックしながら、個々の患者様の症状に合わせて使用していきます。
脳血管型認知症では、脳血管障害の再発によって悪化していきがちなため、再発予防が重要となります。
脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、心疾患などをきちんとコントロールするとともに、脳梗塞の再発を予防する薬剤が使われることが多いです。
また、意欲・自発性の低下、興奮といった症状に対して脳循環・代謝改善薬が有効なケースもあります。
抑うつ症状に対して、抗うつ薬が使われたりもします。
非薬物療法
薬物を使わずに脳を活性化し、残っている認知機能や生活能力を高める治療法です。
認知症と診断されても、本人にできることはたくさん残っています。
まずは家庭内で本人の役割や出番をつくって(洗濯物をたたむ、食器を片づけるなど)、前向きに日常生活を送ってもらうことが大切です。
また、昔の出来事を思い出してもらう(回想法)、無理のかからない範囲で書き物の音読や書き取り、計算ドリルをする(認知リハビリテーション)、音楽を鑑賞したり、演奏したりする(音楽療法)、花や野菜を育てる(園芸療法)、自分は誰で、ここはどこかなど、自分と自分のいる環境を正しく理解する練習を重ねる(リアリティ・オリエンテーション)などの方法が効果的です。
ほかにも、ウォーキングなどの有酸素運動を行う(運動療法)、動物と触れ合う(ペット療法)などの方法が知られています。